東京高等裁判所 昭和47年(ネ)2597号 判決
控訴人千曲運輸および同近鉄大一は、いずれも貨物運送を業とする会社であるが、控訴人近鉄大一は、昭和四二年一一月頃から控訴人千曲運輸からその保有する貨物自動車を傭車してきたのであるが、新たに長野県下の小諸、上田、長野、松本、岡谷、諏訪および山梨県下の甲府に所在する控訴人近鉄大一の各営業所相互間における定期路線運送を開設したことにともない、昭和四三年五月始頃から、控訴人千曲運輸所有の本件加害車を運転手付きで右定期路線運送用として借上げ、右各営業所において控訴人近鉄大一が荷主から注文を受けた荷物の運送に当らせるようになり、本件事故も、本件加害車が控訴人近鉄大一の借上車として同控訴人の小諸営業所から甲府営業所に赴く途中に発生したものであること、本件加害車が控訴人近鉄大一の右定期路線運送に従事した態様を見るに、控訴人近鉄大一の上記各営業所と荷送人および荷受人との間の荷物の集荷および配達は原則として同控訴人がみずから行ない、本件加害車はこれに関与させず、専ら前記定期路線上の運送業務のみを担当させ、且つ本件加害車の運行は、同控訴人の発行する運行表の指示するコース、スケジュールによってすべきものとされ、また、上記各営業所における荷積および荷降も、必ず各営業所における控訴人近鉄大一の係員が立会って荷物の確認に当るのであり、従って本件加害車は、控訴人近鉄大一の前記定期路線上の運送業務に従事中における運行については、その所有者である千曲運輸の指揮監督には服することなく、専ら控訴人近鉄大一の指揮監督に服したこと、更に運賃の精算関係について見るに、控訴人近鉄大一が運送依頼者から受取る運賃のうち四〇パーセントをみずから取得し、残余の六〇パーセントを控訴人千曲運輸が取得する旨の両者間の約定であったこと、およそ以上の事実が認められ、当審証人太田弘保の証言のうち上記認定と牴触する部分は原審証人中島忠利および同岩月袈裟太の各証言と対比してにわかに措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
以上認定の事実によれば、控訴人近鉄大一は、自己の免許を得ている運送路線上の運送業務について、本件加害車をその所有者である控訴人千曲運輸から運転手付きで借上げ、みずから定めたコース、スケジュールに従ってこれを運行の用に供していた者というべく、従って控訴人千曲運輸と同様に、自動車損害賠償保障法第三条の規定により、本件事故について損害賠償の義務があるものといわなければならない。
(平賀 安達 後藤文)